現代の探検家《田邊優貴子》 =08=

良い記事です

壺公夢想

◇◆ Great and Grand Japanese_Explorer   ◇◆

“National Geographic Magazine”より

 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= 

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 ◇◆  第3回 南極の洗礼 =2/2= ◇◆

2日目:ブリザード

翌朝、目覚めると、窓の外が真っ白だった。 寝泊まりしている棟からダイニングのある隣りの棟までは20メートル。朝食に向かおうと外に出ると、息ができないくらいの強風と雪が吹き付けてきた。 そして昨日雪かきをした場所には高さ1メートルの雪の吹きだまりが出来ていた。 たったの一晩、10時間でここまでになるとは。 朝食にありつくのでさえ命がけだ。こうして積み込み作業ができないまま、ブリザードは2日間続いた。

明けたのは11月13日のこと。初日に整備を終えてゲストハウス前に置いてあったスノーモービルとその橇は、半分くらい雪に埋もれていた。 スノーモービルは木製の下駄の上に載せて高床にし、橇は風で飛ばないようにアイススクリュー(氷の中に埋め込み固定する器具)とピッケルで固定していた。
スノーモービルや橇を雪の中から掘り出し、エンジンルームに入り込んだ雪を除去し、ハンドルを動かせる状態にして、小一時間ほど試運転をして残りの雪を解かし終えると、もう夜だった。

調査行の準備がすべて終わったのはそれから3日後、もうすぐ白夜が到来するという11月15日の夜10時のことだった。到着早々に、なんだか南極の洗礼を浴びたような気がした。 みなが持ち込んだ物資と基地に保管してあった物資、あとは今年購入した食料や燃料など、すべてを橇に積み込んでみると、2家族くらい引っ越せそうなほど大量の荷物だった。あとはもう出発するのみだ。

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7日目:アンターセー湖へ出発

アンターセー湖までは120~130kmの道のり。この行程を1台の雪上車と3台のスノーモービルで向かう。

当初聞いていたのは、トヨタのものすごい大きなタイヤのピックアップ型の自動車(ここでは誰もがトラックと呼んでいる)で行くという話だった。ところがこのトラックでは2往復しないと物資を運べないことが分かり、予算とか時間とかそういうものの兼ね合いで、1回で物資を運べる雪上車を使うことになった。

チーム6人のうち3人はスノーモービルを運転し、残り3人は雪上車の橇に載せたキャビンに乗って向かう(雪上車はALCIのドライバーが運転する)。 私はてっきり雪上車で行くものと油断していたら、リーダーのデイルから、スノーモービル隊に指名された。
現地までは、天候と氷の状況が良くてもスノーモービルで10時間はかかるらしい。 聞くところによると、前回のアンターセー湖調査でも3人がスノーモービルで向かったが、途中でホワイトアウトとなって、出発してから4時間後には基地に戻る羽目になったそうだ。

なぜデイルが私をスノーモービル隊に選んだのかは分からない。 私のこれまでのスノーモービルの旅と言えば、長くてもせいぜい1~2時間程度の運転で、あとはちょっとした移動で使うのみ。 決して強そうな外見ではないのは明らかなわけで。 こいつなら大丈夫だろうと勝手に感じ取ったのか、単に南極経験を買ってなのか、なんなのか。

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 基地でこの話を聞いた時、私も暖房の利いたキャビンに乗って雪上車で行きたい、と言うのが正直な気持ちだった。 けれど、これもよい経験、たくさん学ぶことがあるだろう、そして、なんとかなるだろう。 何よりも、南極大陸を直接肌で感じ、この目で見ながら、自分の意志で目的の地へ進みたどり着いたほうが絶対に面白いに違いない。 そんなことを考えていると、次第に不安は薄れていった。 いや、そうやって不安を消そうとしていたのかもしれない。

2014年11月16日、朝7時、アンターセー湖への旅立ちの日がやってきた。 先に出発する雪上車に乗るブラジミル、アリソン、クレメンスを慌ただしく見送り、その30分後、私たち3人のスノーモービル隊も出発する時が来た。 いざという時のビバーク用に、ベビーサック(簡易の寝袋型テント)、エアマット、光反射用ミラー(太陽光で緊急事態を知らせるもの)、お湯とチョコレートとクッキーをザックに詰め込んだ。 防寒着を着込んでもこもこになった私は、スノーモービルを暖気運転し、傍らで見守るルーニヤ、ナディア夫妻と抱き合った。

「スパシーバ!
1カ月後、必ず帰って来るからね」

そう告げてアクセルを握り、ノボラザレフスカヤ基地をあとにした。

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=== 続く ===

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